リフターコラム

俺はグレート♪ 第2部/再挑戦の誓い

90キロ級世界男子パワーリフティング選手権第2位/3回(84年、85年、87年)日本介護スポーツ研究所  代表 前田都喜春


(3)王者の真実

その1;筆者は、練習時の重量と試合時のスタート重量が大きく異なる特性がある。
その理由は、昔は1人で練習していたので頼る人がいなくて試合のスタート重量までは到底練習できず、このため、「練習でこれだけ挙がったら、試合ではこれだけ挙がる筈だ」と予測して前回大会で成功した重量をスタート重量として決めていた。それだけ、練習時の精密工程とスケジュール調整は何よりも重要な配置と考えていた。
トレーニング・スケジュールは、過去の実績を土台にして練習日程を組み立てるが、その中でも、強化というカテゴリーを重視し、正しいフォームできちんと挙上する確実性が要求されるものであり、妥協は許されない・・・。それが全ての原点となる。

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 例えば、1人だけの練習だからSQではスーツを着用しない。試合で着用するのみ・・・。その練習時において、生で260キロ*3回挙上できたら、試合のスタート重量では過去の試合で成功した重量を指定する。多分、325キロは挙がると予測して第1試技に申請する。
スーツは試合時だけに着用して第1試技で慣れていく。
(スーツ加算で+20キロ、ラップ加算で+20キロ、マエダ式スクワットの効率的加算で+25キロぐらい)=65キロの窓埋めを予想して果敢に挑戦していく・・・。
そうすると、325キロは前大会で挙がっているから多少調子が悪くても絶対挙がる重量だと自信をもって挑戦し成功する。第2試技は20キロ前後を飛ばし(第一試技のスピードを見て当日の確実なる重量)を選択する。そして342.5キロに成功。第3試技は一か八かの記録挑戦となる。それが350キロだった・・・。相手との駆け引きなどを見て精神的高揚を高めていく試技へと挑戦していく過程を作り出す・・・。

これらは全て練習時の記録を土台にして、練習でこれだけ挙がったら、試合ではこの重量でスタートできる筈だと絶対の自信を裏付けしておく。その精密工程を作っておくことが筆者にとっては必要不可欠であった。つまりは、1人だけの練習ではスーパースーツを着用したり、ヒトに頼ることはできないから・・・。
その中でも、一度だけSQでつぶれた最悪期がある。でも、1人練習だから補助してくれるヒトがいない。重くて後ろにも投げ出せない。人に頼るということは全然考えられなかった。
つぶれたまま瞬間的に考え・・・、SQラックを両手で掴んで、必死の形相で立ち上がる執念は、尋常ではなかった、と思う・・・。そのような苦い経緯から、自然と自分1人で全てを取り仕切る練習風景に落ち着いたようである。

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さて、「マエダ式SQ」は普通のパワー的SQとは違うところがある。つまり、ウエイト式に深くしゃがみ込んで立ち上がるリバウンド特性を持っているから、重い重量を持ってしゃがんでも、膝を開いて受け持つ態勢ができるから高重量でも何ら怖くない。つまり、SQは立ち上がる運動ではなく、しゃがむ運動である。だから、練習時の重量は絶対の自信をもって試合場で引き継がれていく。とくに、スタート重量でつぶれる訳にはいかないという心理的側面は誰よりも強く、苦い経験則からスタート重量の精密工程は作られているようだ・・・。
なお、このリバウンド特性を持った「マエダ式SQ」は次回の第3部作で各論を詳細に掲載し伝説論を開示していく予定であるから、それなりの技術を要し・・・、それ以上の成果を与えてくれる最大の贈り物が用意されることになろう。乞うご期待・・・。
最近では、硬い素材のスーパースーツが出回っているため、腰が下りない、フォームが崩れる危険性が続出だ。これを考えたら試合だけに着用するのではなく、練習で着用してフォームを固め、硬さの慣れや高負荷トレーニングへの耐性を事前にインプットしておくと良い。とくに、高齢者は慣れることが必要だから、事前の着用練習は必須条件だと感じている。

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