リフターコラム

俺はグレート♪ 第2部/再挑戦の誓い

90キロ級世界男子パワーリフティング選手権第2位/3回(84年、85年、87年)日本介護スポーツ研究所  代表 前田都喜春


2.パワー的実践トレーニング論について

 


(1)『3回*5セット』の真実
重量と回数の関係を見ると、基本的に「8回」はボディビル的筋肥大を目的とした体作りに相当し、1回だけのクイックリフトは最大筋力を発揮する方法になる。その中間において強さと筋肥大とを兼ね備えた効率的な方法が、「3回挙上」という粘れる力の育成過程になる。つまり、筋肥大と強さは違うから・・・、力の概念には3つの断面が必要となる。
筋力と持久力のうち、パワーリフティングに適用される粘りの筋力は『3回*5セット』を基本として、潰れそうで潰れない殆どぎりぎりの重量と回数の選択肢で決まり、強さと筋肥大を兼ね備えた耐性が効率的に強化される。3回*5セットでは、1回にかかる時間を5分として、5分に1回を定期的に繰り返す方法により、メインセットは合計=25分で終了する。
全体では、アップを4セット~、クールダウンを3セット~、合計=12セットを1時間で終了する。そして、これらのメインが終わった後に、メインでは使われない部分=「パーツの違う部分」の強化法に専念する。これはスクワットしかり、デッドリフトしかり。

 

◇体作り・・・・・・・・・ボディビル的筋肥大・・・・・・・・・・・・8回挙上(60%重量)
◇力の育成・・・・・・パワー的粘れる力の育成過程・・・・・3回挙上(80%重量)
◇力の発揮・・・・・・・ウェイト的クイックリフト・・・・・・・・・・・1回挙上(100%重量)

◇筋持久力・・・・・・赤い筋肉の容量アップ作戦・・・・・・・15回~20回(自体重の運動)


(8回*2セット法の正体)
パワーリフティング史の1971年創設~81年までの黎明期では、発祥の地=米国はステロイド・ホルモン全盛期であった。このとき、アメリカを代表する「ある有名リフター」は90キロ級~125キロ級までの4階級を自由に増減していた驚くべき事実があった・・・。
そして、国内の関係者はこのトップリフターの筋力トレーニング論を参考にして、筋力は『8回*2セット』だけで強くなると流布し、初動期の国内に経験不足の間違った知識が登場した。それだけで強くなると一面性だけを強調したところに錯覚があったようだ・・・。

***

 8回挙上の重さは大体60%重量である。最高100キロのヒトが60キロの重さを8回挙上し、これで全面的に強くなると紹介したことから、初心者はこの情報を信じてしまった・・・。
その正体は、米国では当時ステロイド・ホルモン全盛時代であり、薬物を使うような場合は8回*2セットだけで筋力効果がでることが示されていた。
しかしながら、経験則から見ても、力の強さは8回*2セットだけの構成では無理である。全体構成から見ると、重量が軽くなれば8回挙上は重要であり、血液循環と筋肥大の準備段階を形成する。重量が重くなると挙上回数を減じ、「3回」~「1回」の存在価値が生まれる。
そして、粘れる強さの育成過程では「3回挙上」の耐性の強化が最適手法を示し、やがて1回挙上のクイックリフトに引き継がれて最大筋力(スピード)を発揮していく。
トップスピードという白筋ゾーンは、3つの断面(体作り、力の育成、力の発揮)が複合的に関与する。現在では、この重量と回数の関係を「3Wayコンパウンド法」という3層構造のトレーニング理論(中尾達文、2006)にまとめて、トップスピードの成長過程を説明している。・・・赤い筋肉の持久力はその枠外に存在し、日常的な諸動作を支配している。
さらに、昔からアイソメトリックス(約10秒間の静的運動)が一番うまく力を作ると言われているのは、そこに、運動を維持する時間軸が関与することを物語っている。
この時間軸とは、力を育成する粘れる時間の構成であり、力を出している時間が長いほど、うまく力を作ることができるアイソメトリックスの原点になる。つまり、粘れる時間の強さが力の成長過程に関与することから、「3回*5セット法」は80%重量でぎりぎりの重量選択から粘れる時間軸(強さ)を作り出し、力の育成過程に貢献することが分かるであろう。
基本的に、その日の調子が良かったら最高重量(最大筋力)に挑戦するが・・・、調子が悪かったらセット法(3回*5セット)に切り替えて、回数主体で、機械的な反復練習を繰り返す。
メインとパーツの違う部分も同様である・・・。

 

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