リフターコラム

俺はグレート♪ 第2部/再挑戦の誓い

90キロ級世界男子パワーリフティング選手権第2位/3回(84年、85年、87年)日本介護スポーツ研究所  代表 前田都喜春


この事実は次のように説明できる。10年間のブランクで血液を通すべき毛細血管は存続機能としての役目を失い、『使えば増えるが、使わなければ減る!』という閉塞状態にあった。
その流れを一時的にあるいは人工的に制約すると、入口(動脈は深い位置)では影響を受けずどんどん流入するが、出口(静脈は浅い位置)ではその流れを制約されるため、次第に筋肉内部に充満状態が起こる。つまり、ニーバンテージやスーパースーツの効果は、充満状態を確保しながら力を入れている状態だから、血液の流れは、どんな小さな力でも簡単に毛細血管の拡張・増殖を起こそうとして、あらゆる方向へ伸びていこうとする。つまり、毛細血管の拡張・増殖を契機とした全面面積の拡大につながる大きな要素になることが分かる。
このような運動の利益・不利益とは、拡張・増殖過程かあるいは減少・消滅過程のどちらかを選択した結果であるから、前者は広い面積に栄養素が豊富に送られ回復力を増すが、後者は毛細血管の減少から小さな面積が対象となり、栄養素の低下や筋力の低下は避けられない・・・。
さて、予め負荷を与えるプレ・ストレス法の原理により、毛細血管の拡張・増殖を人工的に拡大しようと試してみたところ、回復力は「中2日の休養」で蘇生した驚くべき事実が現れた。
回復力はパワーリフターの命である。ナチュラルな体では「休養」は極めて大切な回復力の中心になるので、運動により毛細血管の拡張・増殖が起これば、その容量が増加し面積が拡大し豊富な栄養素を運んで、超回復の下準備ができる。この原理から筋肉密度の向上ができる。

③.平らになった大腿四頭筋の復活
今まで1つ1つ課題をクリヤーしてきて最大の難関は大腿四頭筋の復活となった。これを如何様に為し得たのか。再挑戦の誓いは、通常のスクワットだけでは回答は得られなかったのであろう。ここでは、より新しい試みとして「シングル・ムーブメント」の挙動から筋肉効果の新たな潮流を予測する意外な側面を報告していきたい。

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 その1;2004年9月、岡山大学の三浦先生から四国高松の中尾氏を経由して、オーストラリアのアデレード大学で行う練習風景を見せてもらったところ、人間は2足歩行で地面に立つ安定感や両手のコントロールがあるが故に、大地に足をつけて「力強い俊敏な動作」が一瞬でも可能であり、中心となる体幹部分をしっかり鍛える抗重力筋の体幹運動が重要となる。・・・。
このとき、片手や片足立ちの微妙な動きを極限まで高めると、「他の力を借りないで、主動筋だけの力」に限定した力学的要素から、アスリートたちは2足スクワットよりもシングルムーブメントの微妙なバランス効果(神経系を含めて)が影響することが研究されていた。
その2;その実行に際して、通常の2足スクワットの他に、シングルSQを正確に実践したところ、その効果は計り知れないことが分かった。 
方法;シングルSQは、片足で立ち、膝を曲げて水平の位置まで降ろして立ち上がる動作により、片足12回*2セットを基本として実行した・・・。大腿骨は量的代謝の主要部分を占め、体幹の一番大きな筋肉郡として40%の毛細血管が存続する生理的効果も存在する。シングルSQは慣れると、片手に20キロを持って強化を実行した。その効果は驚くべきものがあった。
身体動作の微妙な動きや敏捷性は、体幹運動の延長上に展開される神経系統の応答性を強く求めているから、シングル・ムーブメントの粘りや滞空時間の長さから恐るべき筋力効果が発揮され、筋力トレーニング論の新たなる潮流を構築することになろう・・・。
仮に、これを5セットしたら、足はガクガクになるほどのインパクトが強いから、その効果は推して知るべしであろう。このシングルSQは、毛細血管の40%が集中する大腿四頭筋の量的代謝を高めて神経系統の応答性や血液循環を促進し、心肺機能の向上や疲労回復のインパクトに寄与する。故に、大腿四頭筋の復活と回復力再挑戦における必須のアイテムとなった。

④.膝痛の克服
最大の蘇生術は下記の神話になろう。スクワットで立ち上がるとき膝にギクッと痛みが走ったり、デッドリフトで引き上げるとき、膝にギクッと痛みが走る。それ故に、重量物が挙上できない事態が10年前にもあった。練習再開後も同様に痛みが走り・・・、その痛みは年齢的にも解決できないと思われて、選手寿命の結末を予測した・・・!?
膝を中心として動く2足歩行の宿命的な課題、膝が弱ると足腰も弱る。人生最終章において軟骨部分を損傷して関節炎やリウマチの症状も起こる。パワーリフターは膝を酷使する機会が多く、他の競技に比べて軟骨の変化・劣化の損傷が激しく膝への負担は極めて高いと言える。


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 その1;無負荷の状態でも、自体重でも膝を屈伸すると痛みが走る。この難題の解決のヒントは意外なところから見つかった。風呂に入るとこの痛みは出ない・・・。そして足湯をすると痛みは消える・・・、などから見てもヒントは血液循環だった。体を暖め血液循環したら解決できる。
その2;もう1つは関節部分の筋肉ガードを作ること。痛い個所や関節部分の筋肉を養成し関節部分を接合する筋肉郡を太く丈夫にすると、荷重を軟骨や腱で支えるのではなく筋肉ガードで支える態勢ができるので、関節機能が強く丈夫になり存続機能としての役目を果す。

◇膝痛;膝周辺の筋肉郡を太く、丈夫にする・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・膝の屈伸+膝のスプリング
◇腰痛;腰椎と骨盤を接合する部分を太く、丈夫にする。・・・・・・・・・・・・・・・大腰筋=足上げ腹筋
◇肘痛;肘周辺の筋肉を太く、丈夫にする・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・壁押し
◇胸筋;胸鎖乳突筋周辺の筋肉を太く、丈夫にする・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Dプッシュ
 

膝痛;蹲踞のかまえで(踵を浮かし)、膝を開いて、クイック的に膝を屈伸する*20回。
もう1つは膝を閉じて、パラレルにして(踵を浮かし)、膝だけの力に集中し屈伸*20回。
これを「毎日2セット」実施すると、量的代謝と筋力効果の同時効果が求められる。膝周辺の筋肉郡が発達して膝の動きをガードする筋肉が形成される頃、痛みは忽然と消えていった。

このインパクトの強さは、踵を浮かして、つま先立ちで膝だけに集中する微妙なバランスに立脚して量的代謝と神経系統の動きを刺激して、「毎日鍛える2セット」の偉大なる効用から赤筋ゾーンの筋肉密度を向上し関節部分の劣化(細胞の後退)を防ぎ、傷みを消してくれる。

 

 

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